2020年07月29日 日本先進会全般

補足解説④(国営化)「国営化の三原則」とは何か

動画のスクリプト

私たち日本先進会は、以前に配信した動画を通じて、医療は完全国営化すべき、そして介護は準国営化すべきと主張しました。

この主張に対しては、「お前らは何でもかんでも国営化するつもりなのか。共産主義でも目指しているのか」という批判もあり得ると思いますが、そういうことでは全くありません。医療にしても介護にしても、国営化すべき理由はそれぞれの動画でお話ししましたが、私たちは、次にお示しする三つの基準をみたすとき、その産業は国営化を検討すべきと考えています。

 

国営化の三原則

①財政支出で賄われていること
②いわゆる「L型産業」であること
③「立場の非対称性」があること

私たちはこれを、「国営化の三原則」と呼びたいと思います。

まず一つ目の、財政支出で賄われているというのは、そのままの意味です。今の日本では、政府が医療サービスの価格を管理していますし、いわゆる「国民皆保険制度」によって、医療費の大部分は、納税者が支払う税金や健康保険料で支えられています。つまり、医療は財政支出で賄われているという意味で、「公共事業」であると言っても、過言ではないわけです。ただ、医療はもはや公共事業であるにもかかわらず、政府のガバナンスが十分に機能していない中で、医師が個別の診療の必要性を判断している。これは医療の動画でも説明しましたが、診療報酬制度が非合理的であるために、開業医はたとえ悪意がなくても、ムダな診療が増えてしまう傾向があるわけです。そして言うまでもなく、そのムダな診療のコストを支えているのは、納税者が支払ったお金です。

要するに、医療が実質的には公共事業であり、財政支出で賄われている以上、政府が医療現場に対して十分なガバナンスを確立すべきなのは当然であり、そのためには国営化が望ましい、という論理なのです。

次に二つ目の、「L型産業」であるということについてですが、これは経営コンサルタントの冨山和彦氏の理論をお借りした考え方です。冨山氏によれば、産業には大きくわけて、「G型産業」と「L型産業」があります。G型産業のGはグローバルのGで、L型産業のLはローカルのLです。

G型産業は、たとえば製造業やIT産業のように、会社同士がグローバルに競争しているような産業で、そこでは市場メカニズムが適切に機能しやすい。つまり、より優れた商品やサービスを、より低コストで供給できる会社だけが勝ち残って、そうではない会社は淘汰されるということであり、これはいわば「消費者によるガバナンス」が効いているということです。それに対してL型産業とは、多くのサービス業のように、地理的な制約によって、市場メカニズムが機能しにくい産業のことです。たとえば現代人は忙しいから、わざわざ遠く離れたスーパーマーケットには行きません。つまり、ここでは、より優れた商品やサービスをより低コストで供給するスーパーマーケットだけが、必ずしも勝ち残るわけではなく、「消費者によるガバナンス」が効きにくいのです。

では、なぜL型産業であるかどうかが、国営化と関係するのかと言えば、それは「消費者によるガバナンス」が効きにくいL型産業では、G型産業と比較して、政府が国営化によってガバナンスを補完することが望ましい場合が多いと考えられるからです。そして、私たちが国営化すべきと主張している医療や介護、あるいはそもそも公営で行われている義務教育システムなどは、明らかにL型産業に該当するわけです。

最後に三つ目の、「立場の非対称性」があるということについてです。たとえば医療や介護においては、サービスを利用する方々は、必然的に何らかの不安を抱えていることが多く、社会的には「弱者」である可能性が高いと言えるでしょう。つまり、経済学で言うところの「情報の非対称性」に加えて、「立場の非対称性」があることで、たとえば医療や介護のサービスを受ける側は、医師や介護士に対して意見したり、要求したりするのが難しい傾向があるということです。そのような「立場の非対称性」を解消するためにも、政府が適切な形で介入する必要がある。だからこそ、国営化が必要になるということなのです。

以上が、「国営化の三原則」です。これらを満たすような産業は、国営化を検討すべきと、私たち日本先進会は考えています。

ただ注意すべきなのは、これらはあくまで全体的な考え方としての原則に過ぎないのであって、具体的な国営化の内容や程度は、個別の政策領域の中で、丁寧に検討しなければなりません。たとえば、介護は医療と違って、純粋な介護サービスそのもの以外の部分は、国民の自由に任せるべきだという考え方も、そのような発想からきているわけです。とにかくこの動画でお伝えしたかったのは、私たち日本先進会は何でもかんでも国営化すべきと考えているわけでは全くないということであり、「国営化の三原則」のような枠組みがきちんとあるということでした。

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